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名古屋高等裁判所 昭和28年(ツ)9号 判決 1953年12月04日

上告人 控訴人・被告 李応波

被上告人 被控訴人・原告 桜井清三郎

主文

本件上告はこれを棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由は別紙上告理由書記載の通りでこれに対し次の通り判断する。

本件記録によれば上告人は第一審において管轄違の抗弁を不提出の侭本案の弁論を為したこと明かであるから第一審たる名古屋簡易裁判所は本訴の管轄権を有するに至つたものである(いわゆる応訴管轄を生じたものである)。上告人は本訴訴訟物の価額を云為し本訴は裁判所法第三十三条第一項により名古屋地方裁判所に専属すべきものであると論争するが、右裁判所法の規定は応訴管轄の生ずるのを妨げるものではなく、その意味において同規定は訴訟物の価額の如何による専属管轄を定めたものではないから論旨は採用の限りでない。

よつて本件上告はその理由ないものと認め民事訴訟法第四百一条第九十五条第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 栗田源蔵 裁判官 伊藤淳吉)

上告人の上告理由

被告人の請求する処は名古屋市蒲焼町四丁目八番地五十七坪の中北東角地上木造板葺バラツク建店舗建坪一坪四合四勺及び同所地上木造瓦葺バラツク建店舗建坪一坪四合四勺に付退去又は収去して敷地二坪八合八勺の明渡を求めるのである。

被上告人が上告人に対し本件の訴を提起した昭和二十六年十一月十二日の当時に於ても本件明渡を求める土地は栄町交叉点より約三十米北で大津町線の西側に面する繁華街であるので一坪五万円以下ではなく明渡を求める二坪八合八勺でその土地価額は十四万四千円となり第一審は名古屋簡易裁判所でなく名古屋地方裁判所でなければならないにも拘らず被上告人は専属的管轄の規定に違反して名古屋簡易裁判所に出訴したことは違法であるので第二審裁判所としてなした原審の判決は専属管轄に関する規定に違背することゝなるので原審判決は破毀を免れない。尚訴訟物の価格に依つて定まる簡易裁判所か又は地方裁判所かの事物管轄は所謂専属管轄であつてこれに違反したときは専属管轄の規定に違背したこととなるは明白である。本件明渡を求める土地が起訴当時一坪五万円以上であることは何人も認める所であるが裁判所は訴訟が如何なる程度にあつても職権を以て管轄に関する事項を調査すべきであるので上告人は之が御調査を求むるものである。

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